小学校で使うことを想定した子供用の机と椅子のデザインのスタディ(習作)である。
学校に行くとほとんどの時間を自分の席で過ごすので、机と椅子はまるで身体の一部のような存在だった。新学期に机と椅子を与えられた段階で、既に経年を感じる傷や汚れが刻まれており、そこに新たに自分の足跡を加えていく。そして次第に机と椅子は「自分だけのもの」として身体になじんでいく。他の人の席に座ると、同じ規格品でありながらどこか違和感を感じた。
本案は、そのような「なじみ」をより増幅させることを目指している。傷や汚れなどの経年変化をポジティブな「なじみ」へと転化させるため、全ての部材は木のみとし、その木はしっかりとした厚みを持たせている。また、使用する全部材を厚み30mmのみとすることで、一枚の板材から全てのパーツが切り出せ、行程の簡便化をはかる。厚みのあるパーツたちが組み木パズルのように組まれたシンプルな構造なので、傷つくことはあっても製品寿命は長い。また、身長別に3種類のサイズでデザインしているが、机の天板と収納部分は同サイズとし、成長に合わせて足のみ交換出来る。最も表情豊かな部分である机の天板を6年間使えたら「なじみ」はより増幅していくこととなる。 |