築60年前後の京町家を改修して、当事務所として転用するプロジェクトである。設計監理だけでなく、仕上げや家具製作などの施工の一部をセルフビルドにて行った。
まず、天井や壁などの躯体以外の大部分を解体し、大きく吹き抜けた一室空間とした。その中に、背の低いキューブをプラン中央に据えた。キューブの上部は既存梁が横断したロフトとなり、そこには梁と切妻天井に包まれた不思議な空間が生まれている。
プランはキューブにより緩やかに分断され、通りに面した土間空間、庭に面した執務空間、その中間領域、キューブの内部・上部と、多種多様な場をつくり出し、弾力的な業務を促す。
また、室内全体の周囲には2,200の位置まで壁面をつくり、この上下で黒い空間、白い空間とに分かれる。上部の黒い部分は、元々天井裏に施されていた荒壁を手を加えずにそのまま見せている。手を加える部分と既存のままの部分とを明確に分け、シャープで現代的な部分と荒々しく迫力のある古民家らしさとを混在させている。
京都には老朽化した町家が多くあるが、その大部分は有効活用されることなく空き家のままである。このプロジェクトは町家再生のモデルケースでもある。
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